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ゆーゆーさんからの頂き物

私が以前E=mc^2に投稿させていただいた「お嬢様とメイドさん」の二次創作を、ゆーゆーさんから頂きました!
本編の続きで、絹更お嬢様のせいで隼に誤解されてしまったリンちゃんがいろいろと苦労するお話です。
ゆーゆーさん、ありがとうございました!


隼に目撃されてしまってから数日後。
リンの悩みのタネは尽きなかった。
まず一つ目は「お嬢様に責任を取ってくれるように迫った」という噂が使用人の間で流れた。
もっともこれは些細な事だった。
「お嬢様の悪戯」は日常茶飯事で使用人たちも散々迷惑していたからだ。
「いつもの悪戯」の結果だと言えば皆納得してくれた。
隼にも――リンにとって一番大切な点だ――一応はわかってもらえた。

「リンも苦労するね」

と困ったかのような笑みで同情してもらえた。
ただ、それでも気まずい空気はどうしようもなかった。
これが二つ目だ。
そして三つ目は気まずい空気に押され告白できないこと。
そして最後に四つ目。

「リン、いい事思いついたわっ。早速試させなさい」

……絹更お嬢様が全く懲りてない事だった。


「お嬢様、いい加減にしていただけませんか」

思いっきり不機嫌そうな顔と声で応対するとさしもの絹更も
ちょっと怯んだようだった。

「な、何よ…」
「お嬢様のおかげで隼くんとは気まずいままなんですから」
「わ、分かってるわよ、そんな事は」

絹更は冷や汗をかきながら胸を張った。
完全な開き直りだ。
リンは大げさなほどにため息をつく。

「な、何よ。悪かったと思ってるわよ。だから起死回生の方法を考えたんじゃない」
「……お嬢様」

リンは思わず絹更の顔を見つめた。
端正な顔立ちに気まずそうな色が浮かんでいる。
……どうやら珍しくも本当に反省したらしい。

「それでどういった方法なんですか?」
「ふふん、聞いて驚きなさいよ」

興味を持たれたのが嬉しかったのか、たちまちいつもの絹更に戻った。

「隼に告白させればいいのよ~っ!」
「え、え? ええ~~っ?」

一体何を言い出すんだろう。
リンは既に半泣きになっていた。

「む、無理に決まってるじゃないですかっ。大体、魔法の力で告白されても嬉しくないですよ」

思わず絹更にしがみついていた。
何とかしてそんな暴挙は阻止しないと。

「ちっ、ちっ、ちっ。そんな事はしないわよ」
「え……?」

リンが再度絹更の顔を見るとそこには得意げな表情があった。

「そんな事しても意味ないし、第一面白くないでしょ」
「そ、そうですか…」

ほっとしたような、続きを聞きたくないような、そんな複雑な気分だった。

「隼に『リンは妹みたいに大切な存在だ』と告白させるのよ。そうすれば今みたいにギクシャクする事なんてなくなるわ」
「そうでしょうか……?」

愛の告白ならともかく、妹みたいだと言われても微妙だ。
首をかしげるリンに対して絹更は得々として語り始めた。

「馬鹿ね、隼みたいな純情唐変木が照れずにそんな事を言えると思う? 絶対無理でしょ?」
「そりゃまあ、そうでしょうけど……」

聞いてて恥ずかしくなるような事を臆面もなく言えるような隼ではない。
リンにしてみればそういう部分も好ましいわけだが……。

「隼は照れるし、リンだって大切だって言われたら照れちゃうでしょ? そうしたら気まずさなんて吹っ飛んじゃうって」
「……それは確かに……そうかもしれませんね」

既に知ってる自分は果たして隼ほど照れるだろうか……でも
その場の雰囲気もあるから……。
想像したら意外と現実的に思えてきた。
少なくともこれまでの絹更の発案の中では最もまともな部類に入りそうだ。

「じゃあ行くわよ」
「えっ? 今からですか!?」
「当然でしょ。思い立ったが吉日よ」

ズンズン歩き出す絹更に慌ててついていく。

「お、お嬢様、その…」
「あ、いた」
「え?」

確かに廊下の向こうから隼が一人で歩いてくる。

「ちょうどいいじゃない。隼来て」
「お嬢様、いかがなさいましたか?」

隼は早歩きで、しかし一見しただけではそうは思えないように近寄ってきた。

「隼、『あなたが一番可愛くて大切だと思う子に告白しなさい』」

絹更の命令が発せられるや否や、リンに緊張が走る。
絹更はそれに気づいて口元を愉快そうに歪めた。
それらに気づいてか気づかないでか、隼は軽く頷くとおもむろに口を開いた。

「お嬢様。あなたの事を一番可愛くて大切に思っております。主従である事は弁えておりますのでご容赦下さい」
「は……?」
「え……?」

隼は唖然とする2人の少女にはにかんだ笑顔を見せた後、絹更に一礼して去って行った。

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Author:ティーカ
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