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催眠遊戯 前編

お久しぶりです。
なんとなく生活も少し忙しくて、SSが進みません。
今回は、女性術師が後輩に催眠術をかけて玩ぶお話です。例によって某匿名掲示板に投下。

タイトル:催眠遊戯




なんだろう……あたまの中がぼんやりして、なんだか夢の中にいるみたいなふわふわした気分。
さっきから、どこか遠くのほうでだれかの声が聞こえてくるけど、なんだか霞がかかったように思考がはっきりしない。

「……それじゃ、次に私が手を叩いたら和くんはすっきりした気分で目を覚ますんだよ。だけど、和くんは催眠状態だったときに起きたこ

とを何一つとして思い出せないの。思い出せなくても、私が与えた暗示はしっかりと和くんの心の奥に刻まれているからね……」
「うん――」

――パン。
掌を叩く音がして、僕は目を開けた。

「――あ、あれ?」

今、僕は何をしてたんだっけ。
辺りを見回してみると、どうやら放課後の教室みたいだ。

「ふふ……おはよう、和くん」
「里美先輩……? 僕、一体なんでこんなところに……」

慌てて記憶をたどる。そうだ――確か、里美先輩が最近催眠セラピーを勉強してて、実際に効果があるのかどうか、二人きりで練習させて

欲しいって言われたんだっけ……。
それで、確か椅子に座って先輩の声を聞いているうちに眠くなってきたところまでは覚えてるんだけど……。
そんな僕の疑問に応えるように、にっこりと里美先輩が微笑む。

「和くんは、私の催眠術にかかったんだよ」
「ふぇ? 僕が?」

そんなはずがない。確かに先輩は椅子に座った僕に向かって何か話しかけてきてたけど、特に何か命令されたような記憶は無い。
いくらなんでも冗談に決まっている。

「ふーん……信じてないんだ?」

くす、と先輩が唇の端をゆがめる。気のせいか、普段の優しい先輩と違って何か怪しい雰囲気がある。

「だって……そんな、覚えも無いのにいきなり催眠術にかけたなんて言われたって、信じられないよ」

先輩の様子になんだか嫌な予感がした。
このままここにいるとまずいかもしれないと直感し、僕は立ち上がる。

「えと、もう時間も遅いし、今日のところはこれで……」
「あら、そんなに慌てなくてもいいじゃない」

ドアの方に向かって歩き出そうとすると、先輩が指を鳴らす音が聞こえた。
一瞬、頭の中で何かが捻じ曲がるような感覚が迸り、思わず足がふらついた。
慌ててバランスを立て直す。きっと、急に立ち上がったせいで立ちくらみを起こしたんだろう。

「う……ごめんなさい、これから用事があるから……またねっ!」

僕は先輩の誘いを遮り教室から出ようと再び駆け出すと、


……里美先輩の胸の谷間に顔面から突っ込んでいた。
大きくて柔らかい胸に口をふさがれて、思わずくぐもった声を上げる。

「むぐ……っ!?」
「あーん、もう、和くんってば……今日は積極的なのね」

里美先輩は驚いた様子もなくころころと笑っている。

「ち、違うよっ……! 僕は外に出るつもりで……」

困惑しながら、僕は急いで先輩の胸から離れる。
一体何が起きたんだろう。さっきは確かにドアから外に出ようとしてたはずなのに……。
まさか――

「どう? これで催眠術のこと、信じる気になってくれた?」

僕の考えを見透かしたかのように先輩が得意げに微笑む。
じゃあ、やっぱり今、僕が先輩の胸に飛び込んじゃったのは……

「……先輩が僕に、暗示をかけたせいなの?」
「ふふ、信じてくれるんだ。面白いでしょ?」
「し、信じたわけじゃないよっ! それに、今のは……ただ、足が滑っただけなんだから……!」

里美先輩のことだ、催眠術が効いたなんて思われたら、きっと調子付いて僕にあれこれ命令するだろう。
これ以上変なことをされる前に、さっさと帰らなきゃ。

「ふーん……ま、認めなくても、私は構わないけどね? かかってないんだったら、私から離れてみたら?」

未だに先輩の体に体重を預けた形になっている僕に、先輩が意地悪く微笑む。

「わ、分かってるよ……!」

僕は真っ赤になりながら答えると、体勢を立て直すために右手を伸ばして――先輩の胸を鷲掴みにした。

「――ふぇ?」

ふに、ふに。先輩の鼓動と、やわらかい感触が手の平から伝わってくる。

「うわわわっ!? こ、これは別に――」
「やだ、えっちー! 胸が触りたいならそう言ってくれればよかったのにー」
「ち、違うよっ! わざとじゃないんだってば!」

抵抗する素振りも見せずににこにこしている先輩をよそに慌てて立ち上がる。
でも、どうして突然僕は先輩の胸を触ったりなんて……

「ふふ、本当は今のも私が暗示で命令したからなんだけどね。これでそろそろ信じてくれる気になったんじゃないのー?」
「……!」

まるで僕の疑問を見透かしたかのように先輩が答える。

「さ……さっきも言ったでしょ! 催眠術になんて、かかってないってば!」

自分でも声が震えているのが分かる。だけど、これ以上先輩に好き勝手されてたまるもんか。
はっきりと先輩の主張を否定する。

「もう、強情なんだから……。だったら和くんが認めてくれるまで、エッチな暗示をかけちゃおうかなー?」

里美先輩はそう妖しく呟くと、再び楽しそうに唇の端を歪めた。

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Author:ティーカ
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