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愛とマジックショー(6)

「愛とマジックショー」続きです。

他に書いたり読んだりしているせいもありますが、描写が冗長なのか、なかなか展開が進みません。
ノクターン繋がりで女性向けのムーンライトノベルズも読んでみたりしましたが、意外と女性向けの方が好みかも。催眠ものやおねショタの少なさが残念でしたが。

話が逸れました。
奇術シーンは残念ながら次回からとなります。
次回は短めの予定ですが、早ければ今週のうちに投稿できると思います。



ぱたん。

白い扉を閉じて、愛は自分の入った箱の中を改めて見渡した。
広さは半畳強といったところか。入ってきた扉は、舞台の上手――観客から見て右側――を向いており、それ以外の三方向は白い壁。
そして、下手側――観客から見て左側だ――の足元に着替えを入れるための籠が置かれているだけのシンプルな構造の部屋だった。
しかし、作りとしては見た目に反して防音性能が高いらしく、中からはリズや観客の声もざわめき程度にしか聞こえず、外の光が漏れてくる様子もない。

とりあえず、覗きなどの心配はなさそうだ……と少し安心した愛だったが。

――薄暗い。
もともとステージの上は、ショーに集中してもらうため、スポットライト以外の照明は必要最低限しか点灯していないのだ。
慣れた制服ならまだしも、初めて着用するステージ衣装に着替えるのに、この暗がりは辛い。手探りで着替えれば、不要に時間がかかったり着方を間違える可能性がある。
しかし、見る限りでは箱の壁にも天井にも電球らしきものはない。せめて懐中電灯でもあれば……と辺りを見渡すと、入ってきたドアの近くに「照明」と表示されたスイッチが設置されているのが目に入った。

「これ……押して、いいんだよね?」

説明などは受けていなかったが、流石にわざわざ「照明」と書いてある以上、危険なものではあるまい。
何より、あまりリズを待たせて時間を引き延ばす訳にはいかない。意を決して、そのスイッチを入れてみる愛。

カチッ。

小さな音とともに、ステージ奥を向いている方の壁が、光を放ち始めた。恐らく壁一面がプラスチック等でできており、中に蛍光灯などが埋め込まれているのだろう。
着替えるだけにしては少々明るすぎる気もするが、それでも暗いよりはましだ。
無事に証明が点いたことに胸をなでおろし、愛はいよいよ着替えを開始するために下手側を向いた。



――ざわっ。

一方その頃、愛の耳には届かないものの、観客席では期待に満ちたざわめきが広がっていた。
愛がボックスの中に足を踏み入れ、扉が閉まった時点では誰もがリズの次のマジックに移るものと思い、スポットライトに照らされる小柄な金髪少女に注目していたのだが……

カチッ。

小さなスイッチ音がステージ上に響くと、スポットライトはリズから離れ、舞台下手の愛が着替えているボックスの方を照らし出す。それと同時に、観客たちは小さく息を飲んだ。
先ほどまで、ただの白一色だったはずのボックスの外壁。

その壁面に、はっきりと女性のシルエットが映し出されたのだ。そして同時に、妖しさを漂わせるオリエンタルなBGMが流れ始める。

恐らくは、白い壁面がスクリーンのような役割を果たし、内部の明かりが点灯したと同時に、中にいる人物の影絵を浮かび上がらせたのだろう。
もちろん、影絵なので輪郭しか分からないが、その身長や体型、さらに状況を合わせて考えると、中に入っている愛のシルエットに間違いない。
シルエットの主は、自分が映し出されていることなど気付いていないのだろう。明かりが無事に点灯したことに安堵するかのように、下手側を振り返った。

――そう、ステージ衣装に着替えるために。

その事実を認識し、嫌が応にもギャラリーはある期待を抱いてしまう。
あの高原の、生着替え。
もちろん、思春期を迎えたの男子たちの中には、家族にばれないようにこっそりと深夜番組に登場する女優の生着替えを楽しんだり、あるいは成人向けの雑誌(俗に「エロ本」と言うやつだ)を回し読みしてそれ以上のあられもない姿を見たことがある者もいることだろう。
だが、それは所詮、画面や本の中で、見知らぬ女性が肌を晒しているだけに過ぎない。
目の前のステージ上で、ましてや普段から接している相手が着替えを晒すシチュエーションなど、今までの……いや、これから先の人生まで含めても、そうそう巡り合える機会ではない。
両者の間は白い壁で隔てられているため、観客席から見えるのは所詮はシルエットだけである。
だが、見えそうで見えないということが却って彼らの想像力を掻き立て、見られている本人が気付いていないというシチュエーションが背徳感を刺激するのだ。
ほどなくして、男子たちはおろか、更衣室などで愛の肌を見る機会のある女子たちですら、食い入るように舞台の上のボックスに見入っていた。

そんなギャラリーの視線など意にも介さないといった様子で、壁に映ったシルエットはセーラー服の裾に手をかけ、ゆっくりと上着をまくり上げていく。
いよいよ、ストリップ――もとい、着替えが始まる。それを実感するとともに、ギャラリーはボックスの中の光景に思いを馳せる。
高原は今どんな表情を浮かべているのだろう。つけている下着の種類は? そもそもあのシルエットは本当に高原なのか?
会場のあちこちから生唾を飲む音が響き、興奮が最高潮に達した、その瞬間。

「――コホン。
 ミナサン、主役である私を差し置いて、どちらを見ているのデスか?」

BGMが中断するとともに、わざとらしい咳払いを挙げたリズをスポットライトが照らし出す。
すっかりこれがリズのマジックショーの一環だという事実を忘れかけていた観客たちは現実に引き戻され、自分の胸中が完全に見透かされていたことを恥じ入る。

観客の視線が再びリズに集まると、リズは悪戯好きの子供のような微笑みを浮かべ、やれやれとでも言うようにかぶりを振った。

「でも私、ミナサンの気持ちは、よーく分かります。本日のアシスタントは、とっても魅力的ですからね……。
 仕方ないですね……今からすることは、くれぐれも、アイにはナ・イ・ショ、ですよ?」

静かに、とでも言うようなジェスチャーで小さく立てた人差し指を、その小さな唇に添える。
まるでギャラリーの期待に応えるかのような含みを持たせたその言い回しは、一度現実に引き戻された彼らを再び魅惑の世界へ誘(いざな)うには十分な効果があった。

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No title

おおおおお!シルエット越しの生着替えは興奮しますね!!男子生徒や女子生徒の反応も、妄想を膨らませる感じな演出によりまた興奮を煽りますね。リズの仕草や表情もシチュエーションと相まって物凄くいいです。愛ちゃんはどうなってしまうのか。リズはいったい何を見せてくれるのか・・・妄想が捗りますね!次回更新が早くて今週らしいので、楽しみにしています。

Re: No title

わほーい、ありがとうございますー!
シルエットは妄想をそそりますね!
基本的にショーである以上、リズも男女両方の観客を惹きつけるものを目指しています。
多分男子生徒の方が興奮していそうですが……w
ある程度時間が取りやすい今のうちに、ストーリー進めようと思っていますー。

> おおおおお!シルエット越しの生着替えは興奮しますね!!男子生徒や女子生徒の反応も、妄想を膨らませる感じな演出によりまた興奮を煽りますね。リズの仕草や表情もシチュエーションと相まって物凄くいいです。愛ちゃんはどうなってしまうのか。リズはいったい何を見せてくれるのか・・・妄想が捗りますね!次回更新が早くて今週らしいので、楽しみにしています。
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